【鹿児島デート】三宅美術館で出会う「エビハラ・ブルー」と薩摩焼の魅力
この記事でご紹介するのは、鹿児島県鹿児島市にある「三宅美術館」を訪ねて、鹿児島にゆかりのある画家の油彩画や薩摩・琉球の陶磁器などを鑑賞し、南国的な情熱と躍動感にあふれる作品を堪能するデートプランです。
三宅美術館の収蔵品は絵画と焼き物で、洗練された雰囲気と充実した展示内容が特徴です。年に数回はテーマに沿った企画展も開催され、アート好きのカップルはもちろん、知的な時間を共有したい二人にもおすすめのデートスポットとなっています。
今回は、三宅美術館の展示内容や見どころ、カップルでの楽しみ方などについて、同美術館の学芸員である有村さんにお話を伺いました。
鹿児島の芸術を堪能する三宅美術館の魅力的な展示
▲周囲の落ち着いた雰囲気も魅力の「三宅美術館」
交通の便がよい閑静な住宅街に建つ「三宅美術館」では、絵画は鹿児島にゆかりのあるアーティストの作品を約350点、焼物は古薩摩と当地谷山の名陶・長太郎焼を中心に約550点をコレクションしています。鹿児島の芸術と文化を深く知ることができる貴重な場所となっています。
それでは、同美術館の成り立ちや展示内容について、詳しくお話を伺っていきましょう。
鹿児島ゆかりの画家と薩摩焼の名品を集めた三宅美術館
編集部
三宅美術館に今回初めてお邪魔しましたが、最寄り駅から徒歩数分とアクセス性が抜群なのに、閑静で落ち着いた住宅地に建っていて、まずロケーションが気に入りました。
最初に、施設の概要やコンセプトなどについて、お話しいただけますか?
有村さん
当館は、地域の皆さんの「心を癒す(いやす)癒しの空間」であることをモットーに、1987(昭和62)年に開館しました。美術館としては、比較的コンパクトな施設です。
巧みな画面構成で戦前・戦後の日本画壇を牽引した海老原喜之助(えびはらきのすけ)(※1)や、独特の裸婦像で知られる中間冊夫(なかまさつお)(※2)など、鹿児島県に縁ある画家の作品や、江戸期~現代までの薩摩焼を中心とする焼物を収蔵しています。
(※1)鹿児島県出身で、大正末期から昭和にかけてフランスと日本で活動した洋画家。馬をモチーフにした作品を数多く制作し、「エビハラ・ブルー」と賞賛された雪景色のシリーズ作品で知られる。
(※2)鹿児島県出身で、昭和期に活躍した洋画家。半具象的な裸体表現に独自の作風を示し、戦後の具象絵画における一傾向を示した。武蔵野美術大学名誉教授を務め、1985年に東京で没。
これら収蔵品の多くは、海老原喜之助の作品に深い感銘を受けた当館の創設者・三宅力により収集されました。多くの方々にご覧いただきたいという願いから、一般に公開されて現在に至っています。
▲1階のエントランスホール。センスよくまとまった空間で、展示作品に期待できる雰囲気!
また、駐車場から展示室、トイレ、併設カフェを含めた美術館全体がバリアフリー構造となっており、ご高齢の方や車イスご利用の方も作品鑑賞しやすいのが特徴です。
「桜島」を間近に望める鹿児島市南部の閑静な住宅地に位置し、JR谷山駅からも徒歩で5分ほどと、公共交通機関でのアクセス性にも優れています。
薩摩焼の新たな魅力と海老原喜之助作品を堪能できる常設展
編集部
次に、館内の常設展(メインの展示)について教えてください。常設展の特徴や魅力についても詳しく教えていただけますか。
有村さん
1階の焼物展示室(常設展示)では、薩摩焼を系統別に分類して展示しています。また、郷土が誇る窯元・長太郎焼の作品も展示しているんですよ。
▲ソファもある1階の焼物展示室(常設展示)。ゆったりとくつろぎながら、薩摩焼の作品を鑑賞できる
長太郎焼の歴代作品を常設展示しているのは、国内では当館だけだと思います。いつ来館しても、長太郎焼の歴史を追うことができるんです。
さまざまな釉薬(うわぐすり)や形状の作品を見ると、薩摩焼に対する固定観念が変わり、陶芸作品の表現の豊かさに驚かれると思います。
2階の絵画展示室では、常設展示の「海老原喜之助コーナー」があります(特別展開催時は鑑賞できない場合があります)。さらに、年3回の収蔵品展と年1回の特別展も開催しています。季節ごとに、さまざまな画風の海老原作品をご覧いただけますよ。
▲2階の焼物展示室は、開放的な明るい空間(常設展示)。作品を目の前にして、じっくりマイペースで鑑賞可能
初期から晩年までの海老原作品を常時ご覧いただけるのは、国内では当館だけではないでしょうか。没後50年を経た今でも色あせない魅力を放つ海老原作品を、カップルで一緒に鑑賞し、感想を語り合っていただければ嬉しいですね。
必見!海老原喜之助画伯の油彩画「男の顔」
編集部
館内の常設展示の中で、有村さんが特にお好きな作品をご紹介いただけますか?
有村さん
私のお気に入りの作品は、海老原喜之助が1965(昭和40)年に描いた油彩画「男の顔」です。人物の目力がとても強く、鑑賞者をグッと見つめているかのようで、作品の前では思わず足を止めてしまいます。
▲海老原喜之助画伯の油彩画「男の顔」。明るい原色を多用し、中南米のラテン系アーティストの作品を彷彿(ほうふつ)とさせる
この作品は、海老原が古代エジプトに関心を抱いていた時期に制作されたものです。そのため、明るい原色が多く使用されており、異国情緒あふれる雰囲気が感じられます。鮮やかな色彩と力強い表現が、観る人の心に強く訴えかけてくる魅力的な作品だと思います。
「エビハラ・ブルー」と地元作家の魅力を発見できる特別展示
編集部
常設展以外の特別展示(企画展)についても、ご紹介をお願いします。どのような展示が多いのでしょうか?
有村さん
まず、海老原喜之助の収蔵作品から、年3回の収蔵品展と年1回の特別展を開催しています。
海老原喜之助は戦後間もなくから鹿児島・熊本両県の美術振興に尽力した画家で、今日でも多くのファンがいます。特に「エビハラ・ブルー」と呼ばれる作品群は、水墨画技法を意識しつつ青白2色で雪景色を描いたもので、当館はこれらをまとまった点数収蔵する貴重な美術館です。そのため、毎回多くの方にご来館いただいています。
▲2階の海老原喜之助コーナー(常設展示)。何とも魅惑的な「エビハラ・ブルー」の作品群も見える
さらに、年に1回、鹿児島で活躍する現役作家の作品展をジャンルを問わずに特別展で紹介しています。これは学芸員が注目する作家や題材を掘り下げた展示です。
これまでに洋画、日本画、版画はもちろん、コンピューターグラフィックス、陶芸、写真など、多様なジャンルの作品を扱ってきました。
現在(2023年2月時点)は、独立美術協会会員で鹿児島女子短期大学名誉教授の前畑省三のスケッチ展「旅の記憶」を、2023年の3月12日(日)まで開催中です。
この展示では、前畑氏のフランス留学や沖縄県・台湾での調査活動など、国内外の風景や日常を描いた膨大なスケッチの中から、未発表の135点を厳選して展示しています。通常の入館料のみでご鑑賞いただけますので、ぜひお越しください。
公式:三宅美術館(前畑省三米寿記念展「旅の記憶」開催のお知らせ)
▲開催中の特別展「旅の記憶」のリーフレット(~2023年3月12日)
今後の常設展以外の特別展示(企画展)の開催予定については、公式サイトの「企画展案内」ページで告知しています。ご来館前にチェックしていただくことをお勧めします。
厳選された展示作品で楽しむ三宅美術館の魅力
▲1階の長太郎焼コーナー(常設展示)。郷土の名陶と言われる薩摩焼の一流派で、多彩な作風に驚かされる
編集部
有村さんが考える「三宅美術館」の最大の魅力・見どころはどこでしょうか?
有村さん
当館は比較的小規模ですが、焼物展示室では薩摩焼の魅力あふれる作品を厳選して展示しています。絵画展示室でも、収蔵品からテーマに沿った作品を選りすぐって展示しています。そのため、いずれも「選りすぐり」の作品を鑑賞可能です。
展示作品数は多くありませんが、見学が終わる頃には鹿児島の美術のよさを感じ取っていただけると思います。これが一番の魅力だと考えています。
また、1階には併設のカフェがあり、カップルで作品鑑賞の余韻に浸りながらゆったりと過ごせることも、魅力の一つです。
編集部
展示作品以外に、有村さんが考える見どころがあればご紹介ください。
有村さん
当館の入口前には、県内でも数少ない「御衣黄(ぎょいこう)桜」が植えられています。ソメイヨシノが散った後、4月中旬~下旬にかけて見頃を迎える珍しい種類の桜です。ご来館のタイミングが合えば、ぜひカップルで観賞してみてください。
▲毎年4月中旬~下旬が見頃の御衣黄(ぎょいこう)桜。とても珍しい種類のサクラで、何とも言えぬ気品をまとっている
開花したばかりの花は淡い緑色で、徐々に黄色になり、やがて花びらの中心部が赤くなるのが特徴です。御衣黄桜の花言葉は、「永遠の愛」や「心の平安」だそうです。控えめでありながら気品ある雰囲気の花を楽しめます。
カップルデートを彩る三宅美術館の多彩な楽しみ方
▲1階に併設された「Cafe Trois Maison(カフェ トワメゾン)」の店内。洗練された雰囲気で、作品鑑賞後にゆっくりと二人で語り合うのにぴったりの空間です。
ここまでは、一般的な観光客の視点から「三宅美術館」やその展示内容について伺ってきました。これからは、カップルがデートで美術館を訪れる場合に焦点を当てて、お話を聞いていきましょう。
カップルで参加したい!三宅美術館の魅力的なイベント情報
編集部
三宅美術館では、デート中のカップルが楽しめるようなイベントやワークショップなども開催されているのでしょうか?
有村さん
現在の社会情勢を考慮して、2022年度は開催を見送りましたが、2021年度は特別展の開催に合わせて、作品を制作したアーティスト本人によるギャラリートークを行いました。
▲「三宅美術館」で催されたギャラリートークの一コマ
また、薩摩焼作家による連続講座「やきもの講座」も開催してきました。この講座では、陶芸作家のご協力のもと、実際の作品に手で触れて鑑賞する時間を設けており、陶芸作品への理解を深める工夫をしています。
今後のイベント開催については、企画展と同様に、公式サイトの「企画展案内」ページでご確認いただけます。イベントの再開にご期待ください。
美術鑑賞の合間に寄りたい!館内カフェのおすすめメニュー
編集部
館内に併設のカフェがあると先ほど伺いましたが、具体的にご紹介をお願いします。デート中に一息つきたいカップルもいると思うので、おすすめのメニューも教えていただけると嬉しいです。
有村さん
1階にある併設の「Cafe Trois Maison(カフェ トワメゾン)」では、コーヒー・紅茶や季節のドリンク類、軽食(パンケーキ・キッシュなど)をご用意しています。おすすめメニューは、キッシュとクリームラテです。
キッシュはベーコンやほうれん草といった具材がたっぷりと入っており、味もよくボリューム感も満点です。見学中に小腹が空いた際や、軽めのランチにもぴったりです。
クリームラテは、お好みのトッピングを選ぶことができます。クリームの甘味と、ラテ部分の程よい苦味とのバランスが絶妙で、多くのお客様に好評です。
▲1階に併設された「Cafe Trois Maison」のおすすめメニューは、キッシュとクリームラテ。軽めのランチにもなりそう
作品鑑賞の感想などを語り合いながら、カップルでくつろぐのにも最適のスポットです。臨時休業やメニュー変更の可能性もありますので、ご来館前に公式Instagramをご確認いただくか、お電話でお問い合わせください(直通電話:099-268-5670)。
公式:Cafe Trois Maison(Instagram)
お土産にオリジナルグッズを!収蔵作品のポストカードが人気
編集部
三宅美術館でのデート記念に、オリジナルグッズをお土産にしたいと考えるカップルもいるかと思います。館内での取り扱いや人気のアイテムについて教えていただけますか?
有村さん
当館には専用のミュージアムショップはありませんが、1階の受付にてオリジナルグッズを販売しております。人気のアイテムとしては、収蔵作品のポストカード(各50円)やペーパーバッグ(200円)があります。特に、海老原喜之助の作品「男の顔」のポストカードは人気がありますよ。
▲受付で販売中のオリジナルハガキ8枚セット(300円)。色彩豊かで手頃な価格のため、お土産として好評です。
▲オリジナルペーパーバッグ(200円)。海老原喜之助画伯の作品がセンス良く描かれており、小さな贈り物にも適しています。
これらのグッズは、当館見学の記念や鹿児島観光のお土産として多くの方にご購入いただいています。より詳しい情報は、公式サイトの「オリジナルグッズのご紹介」ページでもご覧いただけます。
美術鑑賞の後は美食も!三宅美術館周辺のおすすめデートスポット
▲スッキリしたデザインの1階受付。オリジナルグッズも販売されている
編集部
「三宅美術館」を見学する前後にカップルが立ち寄れる、おすすめの周辺デートスポットがありましたら、ご紹介をお願いします。おすすめのランチスポットがあれば、併せて教えていただけると嬉しいです。
有村さん
はい、いくつかおすすめのスポットがあります。例えば、午前中に当館を見学された後、徒歩7分ほどの鹿児島豚カツの名店「開花亭 谷山本店」でランチを楽しむのはいかがでしょうか。黒豚・たから豚を使用したジューシーな豚カツは、お肉好きのカップルには特におすすめです。
軽めのランチがお好みであれば、先ほどご紹介した館内併設の「Cafe Trois Maison(カフェ トワメゾン)」で、キッシュやパンケーキをお楽しみいただくのもよいでしょう。
ランチ後は、「グリーンファーム(鹿児島市観光農業公園)」に足を伸ばすのもおすすめです。当館から車で40分程度かかりますが、40haを超える広大な敷地内には、農産物直売館や農園レストラン、体験用農地、キャンプ場などが点在しています。
野菜の収穫やお菓子作り、テントサウナなどの体験プログラムを楽しめ、カップルで一日のんびりと過ごせるスポットです。さらに、おうちデートの食材買い出しにも活用できます。
三宅美術館スタッフからカップルへ贈るメッセージ
▲外観入口付近。無駄がなく、洗練された雰囲気を感じる
編集部
これから「三宅美術館」を訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがありましたら、ぜひお話しください。
有村さん
美術作品についての感想を語り合っていると、自分にはない相手の視点や、新鮮な感性に気付かされることがありますね。美術館でのデートは、会話を通じてこれまで気付かなかった相手の魅力に気付き、お互いの理解を深める絶好のきっかけとなります。
小規模ゆえにアットホームな雰囲気を持つ当館で、ぜひ自然体で会話を楽しんでみてください。例えば、気になった作品について感想を共有したり、展示を見た後でカフェでゆっくり話し合ったりするのもおすすめです。また、全館バリアフリーとなっていますので、若いお二人だけではなく、ご年配のカップルのデートにも最適な場所です。
編集部
有村さん、貴重なお話を聞かせていただき、本日はどうもありがとうございました。
来館者の声:三宅美術館の魅力と評判
▲「三宅美術館」に収蔵・展示される海老原喜之助画伯の油彩画「スケート」(一部拡大)
「三宅美術館」でのデートの参考になるよう、実際に見学した方々からよく聞かれる口コミや感想をまとめてみました。多くの来館者が、この美術館の魅力を高く評価しています。
- リピーターです。「エビハラ・ブルー」作品の青色の美しさには、いつも感銘を受けます。海老原喜之助画伯の独特な青色の表現は、見る人の心を惹きつけます。
- こじんまりした美術館だけど、おしゃれで落ち着いた雰囲気。ゆったり気分の作品鑑賞もしやすい。ゆっくりと時間をかけて芸術作品を楽しめる環境が整っています。
- さまざまな技工を凝らした薩摩焼を眺めて、今までのイメージが吹き飛びました。伝統的な薩摩焼の新たな魅力を発見できる展示内容です。
全般的に評判のよい美術館という印象です。海老原喜之助の油彩画と薩摩焼の作品展示が充実していることに、多くの方が感心していました。特に「エビハラ・ブルー」と呼ばれる作品群のファンになる方も少なくないようです。
展示作品についての前提知識がなくても、充実した時間を過ごせるデートスポットだと感じます。静かな環境で芸術を共に楽しみ、会話を深められる場所として最適です。
三宅美術館の料金・割引・混雑しない日時
入館料 | 年間パスポート:一人1,000円 一般(大学生を含む):一人500円 高校生:一人300円 小・中学生:一人200円 70歳以上:一人100円(年齢確認できる資料の提示が必要) ※企画展・特別展の開催時は、入館料が変更となる場合があります |
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割引 | 障害者手帳をお持ちの方:一人100円(手帳の提示が必要) ※介助が必要な方は、付添い1名まで同料金(一人100円) |
混雑しない時間帯 | 平日:終日 土・日曜日:午前中 ※土・日曜日の午後は比較的混雑する傾向があります |
※表示価格はすべて税込です
三宅美術館の基本情報(アクセス・営業時間など)
住所 | 〒891-0141 鹿児島県鹿児島市谷山中央1-4319-4 |
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連絡先 | 電話:099-266-0066 Web:公式サイト「お問合わせ」ページ ※併設カフェの直通電話:099-268-5670 |
アクセス |
【公共交通機関】 【車】 |
駐車場 | 無料駐車場あり ※普通車5台分 |
開館時間 | 10:00~16:30 ※併設カフェ営業時間:10:30〜16:30(ラストオーダー16:00) |
休館日 | 毎週水曜日・年末年始 ※資料整理・企画展準備等のため、臨時休館の場合あり ※併設カフェ定休日:毎週水曜日・日曜日・お盆時期・年末年始 |
併設飲食施設・売店 | Cafe Trois Maison(カフェ トワメゾン) ※受付にて、オリジナルグッズ販売あり |
公式サイト | https://www.miyake-art.com/ |
公式SNS |
※最新の情報は、公式サイト等でご確認ください
※記事中の金額は、すべて税込表示です