【愛知・田原市】博物館で渡辺崋山の芸術に触れ、城跡散策を楽しむ大人のデートプラン
この記事では、愛知県田原市の「田原市博物館」を訪ねて、郷土が生んだ偉人・渡辺崋山（※1）の人生や功績、絵画作品の魅力を体感し、田原市の豊かな歴史・文化を再発見するデートプランを紹介します。
（※1）江戸時代後期の武士・画家であり、三河国田原藩士として家老を務めました。後に幕府の政治を批判した疑いをかけられ、罰せられました（蛮社の獄）。
田原市博物館は、500年以上前に築城された「田原城」の跡に建っており、往時の姿を彷彿（ほうふつ）とさせる外観や、周囲の豊富な見どころも魅力的な施設です。知的好奇心を刺激するデートを楽しみたいカップルや、地元の歴史・文化に触れるきっかけを求める二人には、理想的なスポットとなるでしょう。
今回は、田原市博物館の展示内容や魅力、デートでの楽しみ方などについて、同館の学芸員・清水さんにお話を伺いました。
カップルで楽しむ田原市博物館の魅力的な展示内容
▲田原城跡の二の丸跡に建つ田原市博物館。往時を彷彿とさせる外観も魅力的です
田原城跡の二の丸跡に建つ「田原市博物館」では、渡辺崋山の生涯や絵画作品を誰にでも分かりやすく紹介しています。自刃に用いた刀や遺書、書画、遺品などの貴重な資料を通して、江戸時代後期の絵師であり思想家でもあった渡辺崋山の足跡を辿ることができます。
それでは、田原市博物館の展示内容について、具体的に見ていきましょう。
田原の歴史と渡辺崋山：豊富な資料と作品で学ぶ郷土の偉人
編集部
今回初めて田原市博物館に伺いましたが、田原城跡にあって、江戸時代の雰囲気がたっぷり感じられる施設ですね。
最初に、博物館のコンセプトやロケーションについて、お話しいただけますか？
清水さん
当館は、愛知県田原市の歴史や文化を紹介している市立博物館です。
田原の歴史は古く、旧石器時代にまで遡ります。江戸時代には、田原藩1万2,000石の拠点として栄え、明治時代の廃藩置県まで田原の中心地でした。
江戸後期に活躍した渡辺崋山は、田原藩の家老を務めており、郷土ゆかりの偉人です。崋山の功績は歴史的・美術史的観点から高く評価されており、当館では特に力を入れて紹介しています。
▲渡辺崋山は田原ゆかりの偉人！画才も素晴らしい三河田原藩の家老だった
また、歴史学、考古学、民俗学、美術などさまざまな分野の資料を活用し、特別展・企画展も開催しています。
当館は「田原城跡」の二の丸跡に建てられていますので、博物館見学の際には、ぜひカップルで城跡も散策してみてください。
分かりやすい常設展で渡辺崋山の生涯と作品を堪能
編集部
田原市博物館のメインの展示について、教えていただけますか？また、展示の特徴などについても教えていただけると嬉しいです。
清水さん
常設展示室では、渡辺崋山の生涯をテーマとして、さまざまな展示資料を交えながら紹介しています。初めて崋山に接する方にも分かりやすいように解説されていますので、どなたでも安心してご覧いただけます。
▲常設展示室では、渡辺崋山の生涯や功績を知ることができる。初めて来館する方でも分かりやすい！
そして、隣の特別展示室では、崋山が描いた絵画などを中心とする展覧会も開催しています。1～2ヵ月ごとに展示する作品を入れ替えていますので、来館するたびに新しい作品と出会うことができます。
▲渡辺崋山の手による絵画などを展示する特別展示室
編集部
館内で、清水さんが特にお好きな展示やコレクションがありましたら、ぜひご紹介ください。
清水さん
私が特に好きなのは、渡辺崋山の手による「千山万水（せんざんばんすい）図」です。これは国指定の重要文化財で、天保12（1841）年に描かれました。蛮社の獄（※2）で捕らえられ、田原で蟄居（ちっきょ）している際に描かれたもので、崋山が自刃した年の作品です。
（※2）渡辺崋山や高野長英などがモリソン号事件の顛末と幕府の鎖国政策を批判したため、捕らえられて獄に繋がれたり、処刑されたりした出来事を指す。天保10（1839）年に起きた。
「千山万水」とは、多くの山や川がある深山幽谷（人間があまり入っていない奥深く静かな大自然）を形容する言葉で、広大な自然景観を一望するという意味です。色彩は淡く、清々しい雄大な光景が広がっており、この作品の魅力が特に際立っています。
デートにおすすめの見学順序：紹介映像から常設展示室へ
編集部
清水さんおすすめの館内見学の方法・手順などがありましたら、教えていただけますか？
清水さん
来館されたら、まずは映像をご覧ください。映像では、田原藩家老だった渡辺崋山の生涯について詳しく紹介しています。その後に常設展示室を見学いただくと、初めて崋山に触れる方でも、より深く理解しやすくなるでしょう。
▲常設展示室への入口付近。渡辺崋山を紹介する映像を視聴後に、常設展示室を見学するのがおすすめ
次に、常設展示室隣の特別展示室に移り、崋山が丹精込めて描いた絵画をご覧ください。実物資料でしか味わえない細やかな描き方など、間近で見ることができる貴重な機会です。
崋山は武士でしたが、生活を支える副業として絵を描いていました。その作品は当時の人々の趣向にマッチし、かなりの人気を博していました。
人気の秘密は、画風の斬新さにあったと考えられます。日本画の伝統を踏まえながらも、西洋流の写実を採り入れており、そこに崋山独自のオリジナリティが感じられるのです。
カップルで楽しめる魅力的な特別展示と企画展
編集部
過去に人気のあった特別展・企画展や、繰り返し行われているような企画がありましたら、お話しいただけますか？
清水さん
当館では、郷土・田原の偉人である渡辺崋山の特別展・企画展を何度も開催してきました。「渡辺崋山の神髄」や、「渡辺崋山・椿椿山（つばきちんざん）（※3）が描く人物画」などの企画展を開催しており、毎回好評をいただいております。
（※3）江戸後期の文人画家。江戸小石川天神に生まれ、花鳥画や人物画を得意とする。渡辺崋山の弟子で、蛮社の獄で師が捕らわれた際には、救済運動に奔走した。
今後も崋山を取り上げる展示を継続して行いますので、ぜひご期待ください。
▲弟子であった椿椿山（つばきちんざん）が描いた師匠・渡辺崋山像（田原市博物館所蔵）。部下や弟子からも愛された、実直そうな人柄が滲み出ている
また、崋山以外にも、縄文の貝塚や渥美窯（あつみよう）（※4）に関する展示、地元の画家・書家の展覧会なども企画、開催してきました。
（※4）愛知県の渥美半島（田原市の大部分および豊橋市の一部）で中世に栄えた古窯群。
2021年には、「日本ボタニカルアートの巨星 太田洋愛（ようあい）展」や、「移動美術館2021 愛知県美術館・愛知県陶磁美術館のコレクションから」、「リト@葉っぱ切り絵」などの展覧会を開催しました。
編集部
これら渡辺崋山関連以外の特別展・企画展について、もう少し教えていただけますか？
清水さん
太田洋愛は、田原市の出身であり、日本のボタニカルアートの先駆者です。全国各地を旅してサクラを研究し、その集大成が大井次三郎との共著「日本桜集」です。当館で太田洋愛を大きく取り上げた初の企画展でした。
多くの方にご来館いただき、洋愛の植物画の世界を広く知っていただけたと思います。
葉っぱ切り絵アーティストのリトさんは、SNSなどで知名度が高く、ご存知の方も多いでしょう。リトさんのご協力を得て、初めて作品を展示しました。併せて、ワークショップも開催し、来場者の皆さんに葉っぱ切り絵の世界を楽しんでいただけました。
>>葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの公式Instagram
カップルにおすすめの最新テーマ展：文人画家が描くめでたいもの
編集部
現在開催中の特別展や企画展について、詳しくご案内いただけますか。
清水さん
はい、現在「文人画家が描く、めでたいもの」というテーマで特別展示室にて展覧会を開催しています。開催期間は2022年12月3日（土）から2023年2月5日（日）までです。新年を迎えるにあたり、渡辺崋山をはじめとする文人画家たちが描いた、縁起のよい絵画や作品をご紹介しています。例えば、松竹梅や鶴亀などの吉祥図像が展示されています。
また、今後開催予定の特別展や企画展については、当館の公式サイトにある「展覧会案内」ページを定期的にご確認いただくことをおすすめします。最新の情報が随時更新されています。
（※このインタビュー時点での情報です。最新の展覧会情報は必ず公式サイトでご確認ください）
田原城跡に建つ博物館：歴史を感じるカップルデートスポット
▲「田原城跡」の全景空中写真。かつて、周囲は海だった
編集部
清水さんが思われる、「田原市博物館」らしい特徴・魅力とは、どちらになりますか？
清水さん
当館は、田原城跡の二の丸跡に建てられており、お城のような外観をしていることが目立った特徴で、魅力でもあります。
館内もお城の雰囲気を感じられる空間演出になっています。一部の壁は漆喰（しっくい）壁となっており、これは他の類似施設ではあまり見られない特徴です。
編集部
田原市博物館の展示内容以外での見どころと言えば、どちらでしょうか？
清水さん
当館が建っている「田原城跡」は、明治時代の廃城後に建物は取り壊されましたが、石垣や曲輪（くるわ）（※5）などは、当時のままで残っているところもあります。
（※5）尾根や斜面に造成された平坦地で、周囲に堀や土塁（どるい）、切岸（きりぎし）などを設けて防御を固めたもの。「郭」とも書く。
また、昭和時代には「二の丸櫓（やぐら）」を、平成時代には「桜門」を往時の姿を想像して復元しました。これらは大きな見どころになるので、当館見学の際には、「田原城跡」の散策もおすすめします。
▲復元された田原城跡の二の丸櫓（やぐら）。江戸時代の日本にタイムスリップしたかのような光景
▲復元された田原城跡の桜門。春や秋には、写真映えするスポットに
編集部
季節や時期などの来館タイミングが異なることにより、違った楽しみ方ができれば、ぜひご紹介ください。
清水さん
当館周辺では、四季折々の自然を楽しむことができます。春には桜が咲き誇り、初夏には紫陽花（あじさい）が出迎えてくれます。晩秋には銀杏（いちょう）や紅葉（もみじ）が色づき、黄や赤の鮮やかな彩りを楽しめます。
博物館周辺で楽しむ！カップルデートの多彩なプラン
▲充実した展示資料を誇る常設展示室
ここまでは、「田原市博物館」のコンセプトや見どころなど、観光で訪れた際の魅力を中心にお聞きしてきました。これからは、デートで訪れる場合に焦点を当てて、お話を伺ってみましょう。博物館デートならではの楽しみ方や、カップルにおすすめのポイントなどについて詳しく聞いていきます。
デートの思い出に！ミュージアムショップの人気お土産
編集部
館内には、ショップなどもありますでしょうか？ありましたら、簡単にご紹介をお願いします。また、人気商品などがありましたら、併せて教えてください。
清水さん
はい、当館にはミュージアムショップがあります。渡辺崋山のオリジナルグッズをはじめ、過去に開催した特別展・企画展の図録、田原市の文化財に関する書籍などを販売しています。
デートの記念に、お二人でお気に入りのアイテムを探すのもおすすめです。特に人気なのが「田原城の御城印」で、300円で購入できます。歴史好きの方に喜ばれる商品です。
▲ミュージアムショップでは、デート記念のお土産探しもできる
カップルにおすすめ！田原市博物館周辺のデートスポット
編集部
カップルが田原市博物館を見学する前後に立ち寄れる、おすすめの周辺スポットがありましたら、ご紹介をお願いします。
清水さん
当館近くの蔵王山の山頂には、リニューアルされた「蔵王山展望台」があります。デート中のカップルには、絶好の立ち寄りスポットです。
昼間は、渥美半島を一望する360度の大パノラマを満喫できます。晴れた日には、遠く日本アルプスや富士山まで見えることもあります。夜景も格別で、ロマンチックな雰囲気を楽しめます（毎日22:00まで営業）。
展望台の建物2階には、「蔵王パノラマカフェ」があります。ホットサンドやカレーライス、地元の牛乳を使ったソフトクリームなどが楽しめるので、デート中のランチにも最適です。
また、当館から車で5分ほどのところにある「吉胡貝塚史跡公園（シェルマよしご）」もおすすめです。吉胡貝塚は、縄文時代後・晩期を代表する日本有数の貝塚です。
史跡公園内の「吉胡貝塚資料館（田原市博物館との共通券あり）」では、国指定史跡である吉胡貝塚の展示資料を見学できます。さらに、勾玉作りや火起こしなどの縄文文化体験も楽しめるので、歴史好きのカップルにとって魅力的なスポットです。
>>田原市役所「 シェルマよしごについて（概要・料金・開館時間など）」（公式サイト）
田原市博物館からのメッセージ
▲和のテイストにあふれ、落ち着いた雰囲気のロビー
編集部
これから「田原市博物館」を訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがありましたら、ぜひお話しください。
清水さん
初めて来館された方でも、田原市の歴史の豊かさや、文人画の色彩の美しさを体感していただけると思います。文人画とは、職業画家ではない知識人が描いた絵画や書のことです。
さらに、当館は「田原城跡」に建っており、四季折々で魅力ある風景を楽しめることも特徴です。散策のついでなどに、ぜひお気軽にご来館ください。
編集部
渡辺崋山といえば、蛮社の獄の犠牲者というイメージが強かったのですが、画才に大変秀でていたこと、何より田原藩の家老として、民生や対外政策に功績を残したことを、今回改めて知りました。
田原が生んだ誇れる偉人ですね。田原市出身のカップルがこちらの博物館を訪れれば、地元に愛着や誇りを感じるきっかけになると思います。
清水さん、本日はお忙しい中お時間を割いていただき、どうもありがとうございました。
田原市博物館の口コミ・感想をチェック！
▲渡辺崋山が描いた「一掃百態図」（田原市博物館所蔵）。江戸時代の人々の日常生活の様子が生き生きと描かれている
ここまで、「田原市博物館」のさまざまな魅力について伺ってきました。デートの参考になるよう、実際に見学した方々の口コミや感想もご紹介します。
- 比較的コンパクトな博物館ですが、老若男女を問わずに楽しめる施設だと思います。特に、渡辺崋山についての展示が充実しており、素晴らしいです。
- 企画展も意欲的なテーマが多く、見応えがあります。田原市の豊かな歴史と文化を感じられる博物館です。
- 310円の入館料は展示内容の充実度を考えると非常にリーズナブルです。田原城跡という立地も魅力的で、周辺にも見どころが豊富です。
全般的に評判のよい地域博物館だと言えます。特に渡辺崋山に関する展示資料・作品の充実度や、「田原城跡」という歴史的な立地を高く評価する声が目立ちます。初めてデートの一環で訪れるカップルにとっても、十分に楽しめるスポットだと考えられます。
田原市博物館の料金・共通券・割引について
| 観覧料 | （一般）310円 （小・中学生）150円 ※特別展・企画展開催時は料金が異なる場合があります |
|---|---|
| 共通券 | 【「吉胡貝塚資料館」との共通券】 通常2館で一般510円のところ、400円で観覧可能な共通券があります ※特別展・企画展開催時は料金が変更になる場合があります |
| 割引 | 「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」をお持ちの方と付添の方1名は、観覧料が無料になります ※窓口で手帳の提示が必要です |
※表示価格はすべて税込です
デート計画に役立つ！田原市博物館の基本情報
| 住所 | 〒441-3421 愛知県田原市田原町巴江11-1 |
|---|---|
| 連絡先 | （電話）0531-22-1720 （Web）田原市役所「教育部文化財課へのお問合わせ」ページ |
| アクセス |
【公共交通機関】 【車】 |
| 駐車場 | 無料駐車場あり ※普通車58台、バス7台（田原城跡と共用） |
| 開館時間 | 9:00～17:00 ※最終入館は16:30まで |
| 休館日 |
毎週月曜日 展示資料の入替え作業日 |
| 公式サイト | https://www.taharamuseum.gr.jp/ |
| 公式SNS |
※最新の情報は公式サイト等でご確認ください
※記事中の金額はすべて税込表示です
