出雲文化の粋を堪能!手錢美術館で旧家のお宝鑑賞デート|島根県
この記事では、島根県出雲市大社町にある「手錢(てぜん)美術館」を訪ねて、地元の旧家が何世代にもわたって収集してきた貴重な美術品・骨董品を鑑賞し、江戸末期の蔵を改装した建物や、風情ある庭園も堪能する、趣深いデートプランを紹介します。
手錢家は、江戸初期から明治維新まで、出雲地方で造り酒屋を営んできた名家です。松江藩から苗字帯刀を許され、屋敷を藩主の宿として提供するほどの富を築き、代々の当主も茶道や華道を嗜んで(たしなんで)きました。
今回は、この手錢家に伝わる貴重な品々を収蔵・展示する「手錢美術館」の特徴や魅力、デートでの楽しみ方などについて、同館学芸員の佐々木さんにお話を伺いました。
出雲の至宝を堪能!手錢美術館の見応えある展示内容
▲「手錢美術館」正面エントランス付近。江戸時代の本物の蔵を転用した建物
「手錢美術館(旧:手錢記念館)」は、手錢家から寄贈された貴重な美術品・骨董品を保存・公開するために設立され、1993(平成5)年に開館しました。展示室は、江戸時代末期に建てられた米蔵と酒蔵を活用しています。これらの歴史的建造物の中で、どのような展示が行われているのか、具体的に見ていきましょう。
出雲の名家・手錢家伝来の貴重な品々を展示する美術館
編集部
今回初めて「手錢美術館」に伺いましたが、地元の旧家・手錢家の米蔵・酒蔵を活かした風格ある建物ですね。敷地内もしっとりと落ち着いた雰囲気で、すっかりリラックスしています。
最初に、美術館の概要やコンセプトについて、お話しいただけますか?
佐々木さん
当美術館は、江戸初期から明治維新まで造り酒屋を営んだ旧家・手錢家に伝来する美術工芸品や、歴史資料などを収蔵・展示しております。
▲常設展示室で見られる江戸時代の看板と、造り酒屋時代の道具類。レプリカではなく、すべて本物!
手錢家の屋敷は、出雲大社から稲佐の浜へと向かう「神迎えの道」沿いにあり、周囲を白壁の土蔵と塀で囲まれていました。江戸初期から明治維新まで造り酒屋を家業とし、松江藩や幕府の重役が出雲大社を訪れる際には、宿泊所として屋敷を提供する「御用宿」の役割も果たしていました。
伝来の貴重な美術工芸品や、数多くの歴史資料は、このような手錢家の事情や、当主代々の趣味によって蓄積されたものです。
企画展示室と常設展示室については、それぞれ江戸後期に建てられた米蔵と酒蔵を活用しております。
▲江戸期に建てられた蔵と、情緒あふれる敷地内の通路。常設展示室方向を望む
「出雲の工芸」をテーマにした見応え十分の常設展
編集部
次に、「手錢美術館」の常設展(メインの展示)について、ご紹介をお願いします。
佐々木さん
常設展は、常設展示室で「出雲の工芸」をテーマにして開設しています。江戸中期から昭和初期までの出雲地方の工芸品を数百点展示しています。具体的には、楽山焼や布志名焼などの陶芸品、小島漆壷斎の漆芸作品、八雲塗などが含まれます。
これらの工芸品の多くは、18世紀後半から19世紀前半に活躍した第7代松江藩主、松平治郷(はるさと)公(号は不昧・ふまい)によって発掘されました。
展示品は比較的新しい時代のものですが、個性的かつ魅力的な作品が多く、中には現代まで製作が続けられているものもあります。
▲常設展示室内部の様子。江戸末期に建てた本物の蔵を転用したため、情感ある室内に仕上がっている
▲常設展示室に展示される手錢家に伝わる嫁入り道具類。大変立派なもので、苗字帯刀を許された名家であることが伝わってくる
編集部
佐々木さんが特にお好きな館内の展示や、コレクションがありましたら、ぜひ教えてください。
佐々木さん
当美術館の代表作である「百花群鳥図(堀江友聲)」や、「四季山水図押し絵貼り屏風(曾我蕭白)」は、いつ見ても素晴らしく、多くの方々に鑑賞していただきたい作品です。
▲「手錢美術館」に収蔵される江戸末期の花鳥画「百花群鳥図(堀江友聲)」。実に見事な作品で、これを収集・所蔵してきた手錢家当主の眼力・財力を感じる
しかし、これらは常設展では展示していないため、少々残念です。公式サイト・トップページで、開催中の企画展についてご案内していますので、ぜひご確認いただいてご来館ください。
また、大正から昭和初期にかけて、出雲大社参拝のお土産品として作られていた、布志名焼の盃(さかずき)もお気に入りです。小さいながら、ちょっとした仕掛けがあり、お酒好きの心をくすぐるような可愛らしい盃になっています。
▲大正~昭和初期の出雲大社参拝のお土産品・布志名焼の盃。恵比寿さんと大黒天さんも可愛らしい器で、これは欲しくなるかも!
編集部
佐々木さんおすすめの館内見学の方法などがありましたら、ご紹介いただけますか?
佐々木さん
基本的には、その時々の気分に合わせて自由にご覧いただくのがよいでしょう。当美術館に隣接する「手錢家の庭園」もご覧いただけますので、館内の展示品と合わせて楽しんでいただければと思います。
庭園はそれほど広くありませんが、見どころが豊富です。300年以上の歴史を持つ松や蘇鉄(そてつ)の古木、梅・桜・牡丹・藤などの季節の花々、秋の紅葉、庭石と石灯籠などがあり、訪れた方々から好評をいただいています。
▲隣接する「手錢家の庭園」。比較的コンパクトでも、旧家のお金をかけたお庭であることが、肌感覚で分かる
茶道具・刀剣類も充実!年4~5回開催の魅力的な企画展
編集部
「手錢美術館」では、折々で企画展も催されていますね。これまでに人気のあったものや、繰り返し行われているものについてご紹介をお願いします。
佐々木さん
企画展示室では年に4~5回、さまざまなテーマで茶の湯や刀剣、絵画などの収蔵品をご覧いただく企画展を開催しております。
▲企画展示室内部の様子。いろいろなテーマで、年間4~5回ほど企画展が催される
毎回人気の茶の湯に関する企画展では、道具の取り合わせや陶磁器、漆器、金工など、さまざまなテーマで企画してきました。時間をかけて、じっくりと見学してくださる方が多く、大変嬉しく思っております。
当美術館の所蔵作品は、概ね2~3年に1回の間隔で企画展を開いて展示するようにしています。
編集部
茶の湯や刀剣類に関する企画展が人気とのことですが、その理由はどこにあると思われますか?
佐々木さん
茶の湯の企画展では、一つの茶席で使う道具を組み合わせてご覧いただけたり、普段目にすることの少ない珍しい道具類を間近に見学いただけたりすることが、人気の理由だと考えています。
▲企画展「茶の湯展」での展示。展示品のレベルが高いことは、素人目にも十分感じられる
また、当館の先代館長が「不昧(ふまい)流」という、松平治郷公ゆかりの茶道を極めておりました。そのため、道具の取り合わせや置き方が不昧流を参考にすることも多く、他の流派とは異なる点が面白いと評価されているようです。
手錢家当主が収集した刀剣類は20振り以上を数えます。江戸時代にあつらえた外装(鞘や鍔、小柄などの小物)が当時のままで附属しており、これも来館者の皆さまの興味を引くポイントになっていると思われます。
▲企画展「刀剣展」の展示。苗字帯刀を許された造り酒屋・手錢家ならではのコレクション
出雲文化の精髄を一堂に!手錢美術館の魅力
▲常設展示室に展示される明治期の布志名焼。焼物の専門知識がなくても、高品質な作品が収集されていることが一目で分かる
編集部
佐々木さんが考える「手錢美術館」最大の魅力・見どころについて、お話しいただけますか?
佐々木さん
そうですね、まず常設展示については、出雲地方の歴史・風土の中で育まれてきた美術・工芸・生活様式の特徴について、当館でまとめてご覧になれること、これが一番の魅力ではないでしょうか。
企画展示に目を向けますと、当地の旧家・手錢家に伝えられた美術や歴史に関する展示資料を通して、江戸期の松江藩の実力・底力を感じ取っていただけること、こちらも当美術館の大きな魅力だと思います。
現代日本では、人・物・金のほとんどが大都市に集中していますが、江戸時代までは、地方はそれぞれが独立した「国(領)」であり、独自の経済・文化活動が存在していました。そのような歴史的事実も当館で体感していただけるでしょう。
▲「手錢美術館」に収蔵・展示される見事な「黒花鳥文香合」。香合(こうごう)とは、香を収納する蓋付きの小さな容器で、茶道具であり、仏具でもある
編集部
館内の展示内容以外で、「手錢美術館」としての見どころがありましたら、併せて教えてください。
佐々木さん
当美術館の外観は、土蔵の白壁が特徴です。かつて実際に使われていた米蔵・酒蔵を転用したものですから、レプリカではない本物の歴史を重ねた風情を感じ取れると思います。
そして、先にも話題にしましたが、手錢家の風情ある庭園もゆっくりと観賞してみてください。デートで訪れたお二人にも、リラックスできる格好の場所になるのではないでしょうか。
なお、当美術館に隣接して、「大土地荒神社」が鎮座しています。小さな神社ですが、松と社殿が一体化しており、とてもユニークです。狛犬もところどころ彩色が施されていて、実に個性がありますから、お二人で参拝してみてください。
▲「手錢美術館」(右)には、小さくとも風格ある「大土地荒神社」が隣接
毎年秋の例大祭(10月下旬)では、18:00から翌3:00ごろまで夜通し、江戸前期から続く「大土地神楽」が奉納されることでも有名な神社です。大土地神楽は、国の重要無形文化財に指定されており、古風な雰囲気が何とも魅力的です。
>>一般社団法人出雲観光協会「大土地荒神社 例大祭神楽奉納」(参考サイト)
周辺の観光スポットも充実!手錢美術館デートの楽しみ方
▲出雲大社から稲佐の浜へと向かう「神迎えの道」から、「手錢美術館」へと続く風情ある路地
これまでは、「手錢美術館」のコンセプトや展示内容など、観光客の方々にとっての魅力を中心にお聞きしてきました。ここからは、デートの一環として立ち寄る場合に焦点を当てて、お話を伺っていきたいと思います。
収蔵茶器を実際に使用!春秋開催のお茶会イベント
編集部
「手錢美術館」では、デート中のカップルが楽しめるようなイベントの開催はあるでしょうか?
佐々木さん
ここ数年の間は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して開催を見送ってきましたが、春と秋に「お茶会」のイベントがありますよ(要予約)。手錢家に代々伝わる江戸時代以来の漆器や、陶磁器を実際に使用して、小懐石と濃茶・薄茶の二席を楽しんでいただくものです。
普段は収蔵ケースの中に並んでいる茶器を手に取れる貴重な機会でもあり、大変好評をいただいております。リピーターになる方も多く、毎回すぐに満席になってしまうほどの人気です。
今後の開催予定については、当館の公式サイト・トップページを定期的にご確認ください。デートの予定が合えば、ぜひお二人でご参加いただければと思います。
▲収蔵・展示される「高麗写茶碗(倉崎権兵衛・楽山焼)」。これまた味わい深い茶碗!
ご当地グルメもいただける!手錢美術館周辺のデートスポット
編集部
カップルが「手錢美術館」を見学する前後に立ち寄れる、おすすめのデートスポットが周辺にありましたら、ご紹介をお願いします。ランチをいただけるお店にも触れていただけると嬉しいです。
佐々木さん
当美術館は、出雲大社から稲佐の浜へと続く「神迎えの道」沿いにあります。この道は神迎え神事のルートとなっており、情緒豊かな雰囲気を楽しめます。まずはこちらをゆったりと、お二人で歩かれてみてください。
>>公益社団法人島根県観光連盟「稲佐の浜から出雲大社へ。神々が通る由緒ある「神迎の道」をたどる」(参考サイト)
そして、縁結びのご利益で全国的に名高い「出雲大社」にご参拝いただくのはいかがでしょうか。境内には多くの見どころがあるので、カップルで十分に時間を確保して、ゆったり散策されることをおすすめします。
ランチには、当美術館から徒歩1分のご当地グルメの名店「きんぐ」さんが人気です。看板メニューの大社焼きそばはもちろん、旬の素材を活かした創作料理も絶品です。どのメニューを選んでも美味しく召し上がっていただけるでしょう。
また、午前中や午後の早い時間帯に当美術館を見学して、その後はお車で移動されるのもおすすめです。
国譲り神話と国引き神話で有名なパワースポットの「稲佐の浜」へは徒歩で約10分、国内最高と言われる石積み灯台が建つ「日御碕(ひのみさき)」へは車で約20分で到着できます。どちらも美しい夕陽を観賞いただける、デートに人気のスポットです。
手錢美術館からカップルへのメッセージ
編集部
これから「手錢美術館」を見学するカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがありましたら、ぜひお話しください。
佐々木さん
出雲の歴史や風土を伝える美術館として、常設展示室にある作品は、ぜひお時間をとって、じっくりとご覧になってみてください。実に可愛らしく、目にも楽しい作品がたくさんあるんですよ。例えば、繊細な模様が施された陶器や、美しい光沢を放つ漆器などがあります。
せっかくお二人でお越しいただけるならば、何か一つでもお気に入りの作品を見つけていただけるといいな、といつも思っております。作品を通じて、出雲の文化や芸術の魅力を感じていただければ幸いです。
編集部
「手錢美術館」さんは、決して規模が大きい施設ではありませんが、出雲地方の陶器や漆器、茶道具などが豊富に展示されており、内容が濃く充実している印象を受けました。
建物も江戸期の本物の米蔵・酒蔵をリニューアルされたものですし、歴史的な雰囲気と現代的な展示が融合した、視覚的にも魅力的なスポットだと感じます。
佐々木さん、本日はお忙しい中お時間を割いていただき、どうもありがとうございました。
手錢美術館の口コミ・感想
▲収蔵・展示される「緑釉ティセット」。明治時代の布志名焼で、深みのある緑色が魅力的です。
「手錢美術館」を実際に見学された方々の口コミや感想をいくつかご紹介します。これらはデートの際の参考になるでしょう。
- 江戸時代の本物の蔵を改装した美術館です。静かな雰囲気が心地よく、ゆったりと鑑賞できます。
- 展示作品の布志名焼の黄色が素敵で、その美しさに魅了されました。
- 見応えのある常設展示でした。松江藩の文化的・財政的な豊かさを実感できます。
- コンパクトな美術館ですが、展示品の質は高いです。出雲地方の焼物類や刀剣類に興味があれば、ぜひ訪れてみてください。
「手錢美術館」は全般的に評判の良い美術館です。特に、江戸時代の蔵を活用した風格ある建物や庭園、内容の濃い展示作品に、多くの方が感銘を受けているようです。
初めて訪れるカップルでも、「手錢美術館」で充実したひと時を過ごせそうです。歴史的な雰囲気と質の高い展示品を楽しみながら、会話も弾むことでしょう。
手錢美術館の料金・割引・混雑しない日時
入館料 | ・大人:1人800円 ・高校生以下:無料 |
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割引 | JAF会員の方、身体障害者手帳をお持ちの方は、団体料金に割引(1人600円) ※会員証や身体障害者手帳の提示が必要です |
混雑状況 | 通常、いずれの時間帯も比較的空いています |
※表示価格はすべて税込です
手錢美術館の基本情報(アクセス・営業時間など)
住所 | 〒699-0751 島根県出雲市大社町杵築西2450-1 |
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連絡先 | 電話:0853-53-2000 Web:公式サイト「お問い合わせ」ページ |
アクセス | 【公共交通機関】 ・一畑電車大社線:出雲大社前駅下車で徒歩約15分/タクシー利用で約5分 【車】 ・山陰自動車道:出雲ICから国道431号線経由で約20分 ※出雲大社から車で約3分(徒歩約10分) |
駐車場 | 無料駐車場あり ※普通車20台分 |
開館時間 | 9:00~17:00 ※最終入館は16:30まで |
休館日 | ・毎週火曜日(祝日の場合は翌日) ・年末年始 ・展示替期間中 ※詳細は公式サイトのトップページをご確認ください |
併設飲食施設・売店 | なし |
公式サイト | https://www.tezenmuseum.com/ |
公式SNS | ・Instagram |
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