はじまりの美術館で楽しむ!福島・猪苗代町のアート体験デートプラン
今回「美術館めぐりデート」でご紹介するのは、福島県耶麻郡猪苗代町にある「はじまりの美術館」です。この美術館は、カップルで楽しめる独特な芸術体験を提供しています。障がいのある方々の作品を中心に展示し、新しい芸術の可能性を探求する場所として知られています。
はじまりの美術館:アートと地域が融合する空間
- 酒蔵「十八間蔵」を改修して誕生した独特な雰囲気の美術館
- 多様なアーティストの作品が展示されている
- 来館者が参加できる体験型の作品も楽しめる
- 靴を脱いで入る特徴的な展示室
- 周辺には多数の観光スポットがあり、一日中楽しめる
こんなカップルにおすすめ | どなたでも大歓迎 未知のものや新しい体験に対して、好奇心旺盛で楽しめるカップル |
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写真撮影 | 展覧会により異なりますが、多くの作品は写真撮影可能 ※フラッシュ・動画の撮影は禁止。撮影した写真はSNSへの投稿など、個人利用の範囲内でのみ利用可能です。 |
アクセス |
■公共交通機関の場合
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予算目安 | 500円(一般/1名) |
ユニークな展示物が楽しめる、はじまりの美術館。その魅力やロケーション、特徴について、学芸員の大政愛さんにお話を伺いました。美術館の歴史から楽しみ方まで、詳しくご紹介します。
140年の歴史を持つ酒蔵から生まれたはじまりの美術館
はじまりの美術館は、社会福祉法人安積愛育園が運営する特色ある美術館です。安積愛育園は長年にわたり知的障がいを持つ方の支援事業を展開してきた社会福祉法人で、はじまりの美術館はアートを通して人々や地域社会のつながりをつくり、新しい価値観を生み出すことをコンセプトに誕生しました。
美術館の建物は、2014年6月に築約140年の酒蔵「十八間蔵」を改修したものです。この建物は過去に酒蔵、ダンスホール、縫製工場として利用され、長年にわたって猪苗代町の方々に親しまれてきました。
東日本大震災で被害を受けた建物は、地域住民の協力によって修復され、美術館として生まれ変わりました。公立の美術館では通常見られないような、多様なアーティストの作品を展示するなど、個性的で魅力的な企画展が多くの来館者から支持されています。障がいのある方や、従来の美術界では注目されにくかったアーティストの作品も積極的に紹介しています。
それでは、学芸員の大政さんに、はじまりの美術館の魅力について詳しくお聞きしましょう。
地域とアートの融合:はじまりの美術館の独自性
編集部
まずは、はじまりの美術館で展示している作品について教えてください。
大政さん
はじまりの美術館の自主企画展では、その時々でテーマを設けて、障がいのある方の作品や現代美術家の作品、また時には民芸品など様々な作家・作品をご紹介しています。展示内容は多岐にわたり、来館者に幅広い芸術体験を提供しています。
編集部
開館当初は「アール・ブリュット」をテーマにされていたそうですね。このアール・ブリュットについて教えていただけますか?
大政さん
「アール・ブリュット」とは、日本語に訳すと「生(き)の芸術」という意味で、広義では美術教育を受けていない方達による表現のことを指します。
例えば、障がいのある方で自らの意思で表現をされている方や、独学自習で制作を続けてきた方、刑務所などで制作を続けている方たちなどがいらっしゃいます。これらの作家たちは、既存の芸術概念にとらわれない自由な表現を生み出しています。
開館時には「アール・ブリュット」の美術館として発信をしていましたが、現在は展示内容を拡大し、障がいのある方の作品も障がいがないとされる方の作品も並列してご紹介しています。このアプローチにより、多様な芸術表現を幅広く展示しています。
編集部
大政さんは、芸術作品に触れることの魅力・面白さはどのようなものと考えているでしょうか?
大政さん
1つは、わからないものや知らないものに触れることで、知らない自分や知らない他者に出会えることだと思います。情報社会の中では、調べるとすぐに知りたいことにたどり着くことができたり、想像したりすることが減ったりしているように感じますが、そんな中でもアートは全然知らない風景や光景に連れて行ってくれる感覚を得ることがあると思います。
また、感じ方や見え方は人によってそれぞれ異なるので、誰かと一緒にお話をしながら鑑賞をすることで気づきや発見があるのも、芸術作品に触れることの面白さの一つだと思います。このような体験は、私たちの視野を広げ、新たな発想や創造性を刺激してくれます。
多様性を重視:公立美術館とは異なる作品展示
編集部
現在は障がいの有無に関わらずさまざまなアーティストの作品を展示されているとのことですが、はじまりの美術館ならではの展示品の魅力などは何かありますか?
大政さん
はじまりの美術館では年に4〜5回の企画展を開催しております。
常設の展示室がないため、常に見ることができる作品やコレクションはありませんが、その代わりに訪れるたびに毎回違う作家や作品・表現との出会いがあります。展示室の印象も大きく変わるので、訪れる時期によって様々な発見ができると思います。
編集部
全体でどのくらいの作品が展示されていますか?
大政さん
展覧会によって異なりますが、多くの場合はグループ展形式で複数の作家の方をご紹介する企画展を開催しています。作品点数は、30〜100点ぐらいになることが多いです。
はじまりの美術館でご紹介させていただく作家の方は、これまで様々な美術館や地域で展示をしてきた有名なアーティストの方から、初めて美術館で展示をされる無名のアーティストの方まで、実に多様です。公立の美術館ではなかなか出会うことができない作家や作品にも出会うことができる美術館だと思います。
編集部
色々な出会いが楽しめるのが、はじまりの美術館の魅力なのですね。大規模な美術館に少し飽きを感じている美術館好きカップルにもおすすめできそうです。
コミュニティの中心地:地元との交流を楽しむ美術館
編集部
はじまりの美術館のどのようなところが魅力・見どころだと感じていますか?
大政さん
はじまりの美術館は「様々な人が集える場所」として設立しており、穏やかな雰囲気の中で、偶然の出会いが多くあるのが特徴の一つです。
体験型の作品で他のお客様と自然に交流したり、カフェスペースでは折り紙名人の方や民話語りの方、農家の方など、地元の方の出入りもよくあるため、地元の方との偶然の出会いを楽しむこともできます。従来の美術館の概念とは異なる点もありますが、そこがこの美術館の魅力の一つだと感じています。
地域の皆さんには開館前からとてもお世話になっており、「寄り合い」という名前で美術館のサポートをしていただいたり、一緒に取り組みを行なったりしています。寄り合いのメンバーは20代から70代まで幅広い年齢層です。
例えば、「あいばせMAP」というJR猪苗代駅からはじまりの美術館周辺のまちあるきの地図を作る活動を行いました。あいばせMAPは手のひらサイズのかわいい地図で、MAPを片手にランチや散歩にお出かけするのもおすすめです。美術館周辺の魅力的なスポットも掲載されているので、デートの計画を立てる際にも役立つでしょう。
福島の魅力を体感:季節のイベントとワークショップ
編集部
過去に行われたもので特に人気だったイベントを教えてください。
大政さん
はじまりの美術館の駐車場で行われるマルシェのイベント「はじまるしぇ」は特に人気です。福島県内の様々な飲食店や雑貨店が出店し、ワークショップなども開催されます。ゆったりした雰囲気で楽しむことができるのが特徴です。これまでは毎年6月に開館記念として行っていました。
また、はじまりの美術館も実行委員として参加している「AIZU COFFEE TIME!」というイベントもあります。これは福島県内のコーヒー店を中心に集まり、飲み比べなどができるイベントです。マルシェとは異なる形式で、コーヒーを楽しむ様々な取り組みを行なっています。
編集部
美術館内で開催されている、大政さんおすすめのイベントやワークショップなどは何かありますか?
大政さん
はじまりの美術館では、企画展に関連したギャラリートークや上映会、トークイベントなどを開催しています。また、書き初めや餅つき、クリスマスリース作りなどの季節に関連したイベントも、地域の方やアーティストの方などと協働して行なっています。
開催しているイベントは時期によって異なりますので、HPやFacebook、InstagramなどのSNSで、ぜひチェックしてみてください。過去のイベントやワークショップの様子もご紹介しています。
アーティストによるワークショップや、地域の方を講師として招いて学びあうワークショップなども開催しております。ご自身やカップルでご関心のあるものがありましたら、ぜひ一緒にご参加ください。
企画展の内容によっては、展示作品の一部として体験型の作品が展示されている場合があります。ぜひ実際に手や体を動かしながらアートに触れてみてください。
編集部
作品に関係するイベントやワークショップなども随時開催されているのですね。参加すれば、より作品を身近に感じることができそうです。カップルの会話のきっかけにもなりそうですね。
来館者の感想:はじまりの美術館の魅力と印象
編集部
訪れた方、作品を見た方からはどのような感想がありますか?
大政さん
お帰りの際、お客様から「あー、楽しかったねえ」「おもしろかったね」という声をよく耳にします。また、「建物の雰囲気とも合っていて、とても落ち着きますね」という感想や、「ここに来ると毎回新しい発見があるからおもしろい」と、展覧会が変わるたびにご来館いただくリピーターの方もいらっしゃいます。
最近では、写真投稿アプリを見てから来館されるお客様も増えており、「この作品、写真投稿アプリで見たものだね」と実際の作品を目の前にして楽しんでいただく方も多くいらっしゃいます。写真投稿アプリを通じて、当館の魅力が広まっているようです。
編集部
イベントやワークショップに参加された方からはどのような感想・印象がありますか?
大政さん
小規模な空間で、講師の方や他の参加者との距離感が近いため、満足される方が多いように感じます。親密な雰囲気の中で、より深い交流や学びが得られることが評価されているようです。例えば、参加者同士で作品について意見を交換したり、講師に直接質問できたりする機会が多いことが好評です。
入館料と年間パスポート:はじまりの美術館の料金体系
一般 | 500円 |
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65歳以上 | 250円 |
高校生以下 | 無料 |
障がい者手帳をお持ちの方と付添の方 (1名まで) |
無料 |
大政さん
入場料は上記の表の通りですが、企画展によって料金が異なる場合があります。また、美術館を何度も訪れたい方には、お得な年間パスポート(1,500円)をおすすめしています。このパスポートを購入すれば、1年間何度でも入場できるので、定期的に訪れる方にとっては非常に経済的です。
初めての方へ:はじまりの美術館の楽しみ方ガイド
先入観なしで楽しむ:フラットな目線でのアート体験
編集部
事前に知っておくとより作品を楽しめるような知識はありますか?
大政さん
特にありません!はじまりの美術館では、障がいの有無に関わらず、様々なバックグラウンドを持つ方たちの作品をご紹介しています。作家の障がいの有無や種類については明記していないので、先入観を持たずに多様な表現に出会っていただくとよいのではないかと思います。
編集部
個性的で面白い作品が多いはじまりの美術館ですが、来館者の方々はだいたいどのくらいの時間滞在されているのでしょうか?
大政さん
展覧会によって異なりますが、30分から1時間程度滞在される方が多いようです。体験型の作品を展示することも多いので、そこで何かを作ったり、体験したりすると滞在時間は長めになります。
また、館内にはカフェスペースとショップもありますので、展覧会を鑑賞した後にもゆったりお過ごしいただけます。
編集部
訪れる際は事前に展覧会の内容を確認して、滞在時間の目安を立てておくと良さそうですね。
ohaco cafeは、木のぬくもりが感じられるナチュラルな雰囲気が素敵ですね。飲み物をいただきながら作品について語り合えば、より作品への理解が深まりそうです。カフェでは、展覧会の感想を共有したり、次の予定を相談したりするのにも適しています。ショップでは、思い出に残る記念品を購入することもできます。
フォトジェニックな空間:思い出に残る撮影スポット
編集部
特に人気のある展示スポットはどこでしょうか?
大政さん
はじまりの美術館は靴を脱いで展示室に入るスタイルになっており、木の床の質感がとても人気です。「木レンガ」と呼ばれる松の木のブロックが並ぶ床と、手彫り風のオーク材の床があります。どちらも足の裏の感触を楽しみながら作品をご鑑賞いただけます。
靴下を脱いで、素足になるのもおすすめです。靴を脱ぐことで、いつもよりカップルの距離感が自然と近づくかもしれません。
また、当館は築約140年の酒蔵「十八間蔵」を改修して2014年に開館しました。長さが十八間(約33m)ある長い梁が特徴で、建築物としても様々な賞をいただいており、とても見応えがあると思います。
編集部
敷地内で綺麗な景色や写真映えするスポットはありますか?
大政さん
展示室一番奥のお部屋の窓からは、天気がよいと磐梯山が見えることがあります。ただし、企画展によっては窓が塞がれている場合もあります。
はじまりの美術館の建物は、明治13年に当初酒蔵として建てられ、その後ダンスホールや縫製工場になったり、人が住んだりと様々な使われ方をしてきました。展示作品以外にも、特徴的なダルマの置物や「準備は周到に」と書かれた古い張り紙など、隠れた見どころもあるので、ぜひ探してみてください。
編集部
思い出の写真を撮影するのにおすすめのスポットがあれば教えてください。
大政さん
美術館西側の正面入り口の前でお写真を撮られる方が多いです。来館の思い出になると思います。また、館内に展示されている作品と一緒に撮影したり、自然光が入る廊下も意外な撮影スポットの1つです。
展覧会によりますが、作品の多くは写真撮影がOKです。気になる作品を撮影したり、作品と一緒に写真を撮ったりできるので、写真やカメラが好きな方にもおすすめですよ。
カップルで楽しむ:対話しながらのアート鑑賞
編集部
カップルに、はじまりの美術館をどんな風に楽しんでもらいたいでしょうか?
大政さん
美術館というと「静かにしないといけない」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、はじまりの美術館では、他のお客様にご迷惑にならない範囲でなら、ぜひたくさんおしゃべりしていただきたいです!
はじまりの美術館では本当に様々な作品をご紹介しているので、感じたことや気づいたことを自由にお話しながら展覧会を楽しんだり、カップルのお互いのことを知り合うきっかけにしたりしていただければと思います。例えば、好きな作品について意見を交換したり、作品から連想する思い出を語り合ったりするのもおすすめです。
また、館内では時間を気にせず、ゆったり過ごしていただきたいです。はじまりの美術館はとても小さな美術館ですが、過ごし方によってはずっとゆっくりできる空間だと思います。ゆったりとした時間の中で、作品をじっくり鑑賞したり、お二人の会話を楽しんだりしてください。
はじまりの美術館を起点に:猪苗代町周遊デートプラン
編集部
はじまりの美術館周辺にある、おすすめのデートスポットがあれば教えてください。
大政さん
はじまりの美術館がある猪苗代といえば、やはり猪苗代湖がおすすめです。特に志田浜の夕焼けは絶景で、とても美しいです。自然を楽しむなら、夏の達沢不動滝もおすすめです。迫力ある滝を見ながら涼しさを感じられ、とても気持ちがいいです。
また、車で20分ほどの場所に、日本で最多のサルバドール・ダリ作品を収蔵している諸橋近代美術館があります。複数の美術館を巡るのも楽しいデートプランになります。さらに、アクアマリンいなわしろカワセミ水族館、野口英世記念館、天鏡閣など、猪苗代町内には様々な文化施設があります。
猪苗代町内にはおしゃれなカフェや美味しい飲食店も多数あるので、車やレンタカーを利用すれば、一日中楽しむことができると思います。
はじまりの美術館からカップルへのメッセージ
編集部
最後に、はじまりの美術館で美術館デートを考えているカップルへメッセージをお願いします。
大政さん
はじまりの美術館の名前の「はじまり」には、「新しい出発」と「根源」の両方の意味が込められています。来館された方々が、ここで作品や人、さまざまな物事に出会い、それをきっかけに新たな何かがはじまるようにという願いも込めています。
当館は、お二人の価値観や感じ方を互いに知り合うための素晴らしいきっかけになると思います。ぜひお気軽にご来館ください!
編集部
ありがとうございました。
はじまりの美術館:アクセスと施設情報
住所 | 〒969-3122 福島県耶麻郡猪苗代町新町4873 |
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電話番号 | 0242-62-3454 |
開館時間 | 10:00~18:00 |
公式HP | https://hajimari-ac.com/ |
休館日 |
火曜日(火曜日が祝日の場合は翌水曜日)、年末年始、展示入れ替え期間中 |
駐車場 | あり 美術館西側に15台分 ※隣接する手打ちそば店「しおや蔵」と共用 |