【弁護士監修】離婚後の再婚を考えるなら、必ず事前に確認しておきたいこと|マリピタ
離婚直後は考えにくいかもしれませんが、やっぱり気になる新しいパートナーとの出会いや再婚のこと。とはいえ、離婚から再婚までの期間や、子供がいる場合は戸籍や養育費についてなど、再婚だからこそ気を付けておきたいことがたくさんあります。また、「バツイチや子連れでの結婚は難しいのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
ここでは、離婚後の再婚にまつわるルールや仕組みに詳しい弁護士の萩谷麻衣子先生に、再婚する時に気を付けたいことや失敗しない再婚のコツを教えていただきます。再婚を検討しているかたはチェックしてみてください。
離婚後に再婚できる人はどのくらい?
そもそも「バツイチやシンママの恋愛・結婚は難しいのでは?」と感じる人も多いのではないでしょうか。再婚をする人は、どのくらいいるかご存じでしょうか。2019年の内閣府発表のデータ*によると、結婚するすべての人のうち男性で約20%、女性で約17%が再婚です。
つまり、再婚はめずらしいことではなく、結婚する人のうち約5人に1人は再婚ということになります。
結婚する人のうち約5人に1人が再婚で、再婚する人の割合は年々増加しています。
多い?少ない?3年以内に再婚する人は3人に1人
また、離婚から再婚までの期間を見てみると、男性の場合は、離婚後1年未満に再婚する人が約15%、3年未満での再婚は38.5%にも上ります。
女性は、離婚後1年未満で再婚する人が約13%、3年未満が35.4%となり、男女ともに3人に1人以上が離婚後3年以内に再婚しています**。
離婚後100日は、結婚できないって本当!?「再婚禁止期間」とは
離婚後3年以内に再婚する人が多い一方、女性には離婚後すぐに再婚できないルールがあるのだとか。萩谷先生に詳しく伺いました。
離婚をした女性の約7人に1人は、離婚から1年未満で再婚をしています。
これを短いと感じるか長いと感じるかは、個人差があると思いますが、じつは女性には「再婚禁止期間」というものがあり、離婚後に再婚ができない期間が定められています。その期間は100日です(民法の733条)。
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。(民法733条1項)
父親がだれか明確にするための期間
なぜ女性にだけ「再婚禁止期間」が決められているの?と疑問に思うかたもいらっしゃるかもしれません。
女性の場合、離婚から再婚までの期間が短いと、離婚前後で妊娠した場合にお腹の赤ちゃんのパパがだれであるかがわかりにくくなってしまいます。赤ちゃんのパパが推定できないことは赤ちゃんにとって不利益。
赤ちゃんのパパを推定にするために、民法772条2項で離婚をしてから300日以内に生まれたら元の夫の子ども、結婚(再婚)後200日を過ぎて生まれたら現在の夫の子どもと推定するために定めています。
離婚後100日以内に結婚OKとなるケースも
ただし、離婚のときに”妊娠していない”とはっきりしている場合や、離婚時点で妊娠中の場合は、再婚禁止期間の100日のあいだでも再婚することができます。
【100日未満で再婚できるケースの例】
- 離婚時に妊娠していない
- 離婚時に妊娠している
- 元の夫と再婚する
医師に妊娠していない事実の証明等を作成してもらい、これと一緒に再婚の婚姻届けを提出すれば婚姻届けは受理されます。
民法第733条第2項に該当する旨の証明書の様式(法務省)
離婚時に妊娠している場合は、出産の翌日以降であれば再婚禁止期間中であっても再婚することができます。また、元の夫と同じ人と再婚する場合なども100日以内の再婚が認められます。
”自分に”子どもがいる場合の離婚後の再婚、ここに注意
離婚後の再婚で自分に子どもがいる場合は、とくに子どもの戸籍や姓(苗字)、元の配偶者から受け取っている養育費などについて、きちんと理解をしたうえで判断する必要があります。
離婚で子どもの戸籍や苗字はどうなるの?
そもそも離婚のときに妻が夫の戸籍から抜けると、何もしなければ、子どもはそのまま元夫の戸籍に残ります。苗字も元夫の苗字のままです。たとえ子どもの親権がママにあっても戸籍や苗字は自動的には移動しません。
まずは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申し立て」を行います。これが認められたら本籍のある市区町村役場で母親の戸籍に子どもの籍を移動させます。これでママと子どもが同じ姓(苗字)となり同じ戸籍に入ることができます。
ちなみに、離婚や別居の際に子どもの親権を取りたいと考えているなら、子どもは自分の手元から離さないのが鉄則。子どもを置いて家を出て、生活が落ち着いたら引き取ろうと考えるのは甘いと言わざるを得ません。相手が親権を争ってくれば負けてしまう可能性大です。ご注意ください!
再婚したら子どもの苗字は変わる?
次に子どもがいる人が再婚する場合ですが、再婚の場合は子どもを新しいパートナーの養子にする・しないの検討が必要です。
養子縁組をする場合
子どもと新しいパートナーで「養子縁組」をすると、新しいパートナーと子どもは「親子」の関係になります。子どもには相続の権利が発生したり、パートナーには子どもを扶養する義務、子どもには将来パートナーの老後の面倒を見る義務がそれぞれ生じます。
養子縁組をすれば、パパ・ママ・子どもが全員同じ苗字になります。
養子縁組の手続きは、婚姻届を出したときに同時にできますが、結婚後あとからでも可能です。ゆっくり考えてからの手続きでも大丈夫!パートナーにとっても、子どもの扶養義務などが生じる大きな決断となります。2人でよく話し合って決めるようにしましょう。
私が経験した子連れ再婚のトラブルでは、自分の子どもと新しいパートナーの性格が合わなかったという例がありました。子どもと新しいパートナーがなじむまでの時間は、子どもの年齢なども関係すると思いますが、急がずじっくり時間をかけるのもひとつの手かもしれません。
また、新しいパートナーに対して「子どもの親」となることを求めず、子どもとパートナーが「友人」のように仲良くなれたケースもあります。
家族の形はそれぞれ。お互いに無理なく過ごしていけるとよいですね。
ちなみに、一般的な「普通養子縁組」の場合は子どもにとって実の親とも親子関係は残るため、養子縁組をしても元のパートナー(元夫・元妻)と子どものあいだにも相続権や扶養の義務が残り続けます。
元夫からお養育費はどうなる?減額?
養子縁組をすると、新しいパートナーが子どもの父親となり扶養の義務が発生します。基本的には元の夫にも扶養の義務は残り続けますが、再婚相手や元夫の収入によっては現在受け取っている養育費が減額になることもあります。
養子縁組をしない場合
子どもと新しいパートナーとが養子縁組をしなくても、再婚することはできます。たとえばママが子連れで再婚する場合、婚姻届けを出すとママだけがパートナーの戸籍に移り、子どもは元の戸籍に残ったままになりますがこのままでも問題はありません。子どもの苗字を変えたくない場合などにこの方法を取る方もいらっしゃいます。
子どもを新しいパートナーの苗字にしたい場合には、裁判所に「子の氏の変更」の申請を出せば、養子縁組をしなくても家族みんなで同じ姓を名乗ることができます。
萩谷先生のワンポイントアドバイス 子どもの気持ちを大切に
萩谷先生
養子縁組や姓の問題など、手続きでクリアできることもたくさんありますが、やはり大切なのは子どもの気持ち。親の再婚という新しい環境で子どもが楽しく成長できるために必要なことは何かを新しいパートナーと話し合ったうえで再婚に進めるとよいですね。
子どもの成長や新しい暮らしを見守るとともに、子どもと一緒に暮らすことになるパートナーもまた新しい環境へのチャレンジとなるため、最初はうまくいかないことや慣れるまでに時間がかかることもあるかもしれません。大変なことも含め、2人で一緒に乗り越えていけるかどうかも再婚の場合の大切なポイントとなります。
子どもとパートナーの関係性づくりのために、再婚前に会う時間や一緒に遊ぶ時間を増やしたり、籍を入れずにまずは一緒に暮らしてみることもひとつの方法です。
”相手に”子どもがいる場合の離婚後の再婚、ここに注意
相手に子どもがいて子連れで再婚をする場合は、子どもがいない場合の再婚よりも子どもやお金の問題が複雑です。再婚をする場合にはまず、相手の子どもとあなたが養子縁組をするかどうかを検討する必要があります。
相手の子どもと養子縁組をする場合
再婚相手の子どもと養子縁組をする場合、あなたは子どもの「親」となります。子どもはあなたの財産の相続権を持ち、あなたには子どもの養育義務が生じます。同時に子どもにはあなたの将来を見る義務も生じます。
まずは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申し立て」を行います。これが認められたら本籍のある市区町村役場で母親の戸籍に子どもの籍を移動させます。これでママと子どもが同じ姓(苗字)となり同じ戸籍に入ることができます。
大切なことなので、自分とパートナーの双方が納得のいく形になるのがベターです。子どもとの養子縁組は、婚姻届けと同時でなくてもかまいません。再婚後にじっくり時間をかけながら子どもとの関係性を築き、あとから養子縁組をすることもできます。
相手の子どもと養子縁組をしない場合
相手の子どもと養子縁組をせずに再婚することももちろん可能です。子どもの年齢が大きい場合や、子どもとの関係性、お金の問題などがある場合は、無理に養子縁組をしなくてもよいかもしれません。
子どもとパートナーの離婚相手(元妻・元夫)は、離婚後も「親子」であることに変わりありません。また元妻・元夫は、あなたのパートナーと夫婦ではなくなったとしても子どもにとっては父と母です。離婚後の2人が会ったり、子どもに関することなどで連絡を取り合うことも当然あります。
私が経験した例では、パートナーや子どもが元の奥さんと定期的に会うことにどうしても耐えられなかったとおっしゃった女性がいました。こうした感情を変えることはなかなか難しいかもしれません。
再婚でうまくいくのはこんな人!
萩谷先生に再婚がうまくいく人はどんな人なのか、聞いてみました。
萩谷先生
まず前の結婚の失敗なども踏まえて「自分にとって大切なこと」の整理ができている人は、再婚後の結婚生活がとても順調に思います。
毎日の暮らしの中で、大切だと思うことは誰にでも多少なりともありますが、「これはどうしても譲れない」と感じるものもあれば、「まあいいか」と思えるものも。どうしても譲れない物事が合わない場合は、そもそも再婚相手としては違うのかもしれません。
けれども、小さなことまでいちいち目くじらを立てていては、お互いに疲れてしまいます。相手に「こうあってほしい」とか、「結婚生活はこういうものだ」と決めつけてしまっていては、なかなか100点満点の相手というのは難しいですよね。
問題になりがちなのは、金銭感覚・親との距離感
再婚がうまくいかないケースでは、どんなことが問題となるのでしょうか?
萩谷先生
再婚に限らずですが、離婚の原因となるのは、いわゆる「性格の不一致」がダントツの1位です。「不貞」「DV」が原因での離婚ももちろんありますが、どちらが一方的に悪いわけではない「性格の不一致」での離婚が多いのが現状です。
私の経験ではとくに、金銭感覚と親との距離感のズレが原因になることが多いように感じます。お金の使い方や、自分の親との付き合い方、あるいは相手の親との付き合い方の問題は、簡単には解決しにくい問題のため、最初は我慢をしていても限界が来てしまうのかもしれません。
再婚前の「お試し同棲」もおすすめ
とはいえ、実際に一緒に暮らしてみて「これはすごく嫌だった!」ということもあるかもしれません。再婚前に相性を見極めることはできるでしょうか。
相性の見極めといえるかどうかはわかりませんが、結婚前に「あれ?」と違和感があることや「これは嫌かも」と感じていることが、結婚後に劇的に改善することはまずないと思っていいと思います。
「結婚したら変わってくれるだろう」とつい期待したくなりますが、相手の嫌な部分はむしろ、結婚後に大きく膨らむと思っておいてよいくらい。嫌だなと思うことが「まあいいか」の範囲なのかどうか検討し、譲れない部分だとしたら再婚すべきかどうかから考え直してみてもよいのではないでしょうか。
また結婚前は「自分が我慢すればいいや」と考えがちですが、我慢は長く続きません。一緒に暮らしてみてから籍を入れても遅くはないのかなと思います。
再婚は、手続きの煩雑さや子どもやパートナーの気持ちの面など、配慮しなければならないことがたくさんありますが、せっかく再婚をするのであれば2人で力を合わせて乗り越えてハッピーな新しい家庭が築けるとよいですね。
*「結婚と家族をめぐる基礎データ」内閣府男女共同参画局
**人口動態調査人口動態統計